この「水差し」は、17世紀にスペイン、タラベラ・デ・ラ・レイナで制作された作品です。この時期のタラベラ・デ・ラ・レイナは、陶器や磁器の生産で知られ、特に独自のティン釉薬を使用した作品が特徴的でした。
この水差しは、ティン釉薬で装飾された陶器で作られています。ティン釉薬は、光沢のある表面と美しい色彩をもたらすことで知られており、この水差しにもそれが見られます。作品の高さは約35.6センチメートルで、比較的大きなサイズです。
デザインは独特で美しく、スペインの伝統的な装飾や文化が反映されています。おそらくこの水差しは、当時の富裕層の家庭で贅沢な食卓を彩るために使用されていたでしょう。そのため、使われていた時代の風景や社会の一端をうかがい知ることができる貴重な歴史的なアート作品と言えます。
この水差しの太く、ざっくりと描かれたデザインは、カスティーリャのタラベラで一般的なものであり、陶芸家たちはヒスパノ・ムーア様式の光沢陶器の伝統を打ち破り、当時の北イタリアの陶器に関連した生き生きとした多彩な絵画的スタイルを発展させました。
画像出所:メトロポリタン美術館
この水差しの重厚で簡略化された形状や大胆な装飾は、アラゴン地方でのイスラム陶器生産の初期の中心地の1つであるテルエルの陶器の典型的なものです。テルエルはレコンキスタ後も繁栄し続けました。この水差しの伝統的な二色法は、銅酸化物から得られる濃い緑色とマンガン酸化物から得られる赤みがかった黒色を使用し、10世紀からal-Andalus(イベリア半島南部のイスラム支配地域)で食器に用いられていたものです。この二色法は、アラゴン、バレンシア、パテルナの陶芸家たちによって何世紀もの間受け継がれました。
画像出所:メトロポリタン美術館
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