【寒山拾得図 Hanshan and Shide】日本‐江戸時代‐与謝蕪村
「寒山拾得図」は、江戸時代前期の日本で活躍した画家、与謝蕪村による作品です。この作品は、紙に墨と色彩を使って描かれた、2枚の掛け軸からなる絵画です。
「寒山拾得図」は、寒山と拾得の二人の禅僧を描いたもので、禅の教えや哲学を表現した作品として知られています。寒山と拾得は、禅の教えを追求し、悟りを求める修行者として描かれています。この作品は、自然の中で静かに精進する禅の修行の姿を表現しており、山水画の中に禅の精神が投影されています。
与謝蕪村は、絵画だけでなく俳句でも名声を得た多才な芸術家であり、彼の作品は繊細な筆致と深い情感で知られています。「寒山拾得図」も、豊かな表現力と抑制された色使い、繊細なディテールが特徴であり、禅の精神を描く上での蕪村の芸術的な優れた表現の一例とされています。
著名な画家で詩人の与謝蕪村は、伝説の初期唐代の禅僧である寒山と拾得を描いています。右側にいるのは、のん気な寒山で、背中に詩を書くための巻物を背負っています。彼の常にそばにいる仲間の拾得は、視線をそらし、大きな竹製の帽子で頭を隠しています。こうした作品では、拾得はしばしば箒を持って描かれ、彼が寺の清掃員として奉仕していたことを思い起こさせます。二人は、現在の浙江省にある天台山の国清寺で修行していたとされています。彼らは中国や日本の作品において、愛すべき風変わりな性格を象徴するため、喜びに満ちた表情で描かれることが多いですが、蕪村はここでは拾得の姿を後ろ姿で描き、顔を見せず、寒山の顔に微笑みを描いています。その効果は愛らしく、魅力的です。
二人の姿はそれぞれがほぼ全体を占めるほど大きな掛け軸の表面に、大胆な墨の筆使いと軽い色彩で描かれています。彼らの衣服の輪郭は、書道の力強さを見せる大きな筆で描かれており、墨の質感の変化が表現されています。左側の拾得の衣服の輪郭は、墨をたっぷり含んだ筆で描かれました。右側の寒山の袖のしわは、乾燥した筆を紙に引きながら筆の毛が分かれるように描かれ、粗い質感を表現しています。衣服や箒、岩、背景は軽い墨や色彩の濡れた色で素早くスケッチされ、時折輪郭を超えて広がり、不均一なトーンや硬い筆の痕跡が残されています。寒山の顔は細かな筆で輪郭を描かれ、均等に色を塗りつぶされており、穏やかな笑顔を持った姿になっています。二人の髪は二層の墨で描かれ、濡れた墨の上に乾いた分かれた筆で髪の毛を表現しています。
与謝蕪村は、名高い南画家に数えられるだけでなく、著名な俳人でもありました。彼の書道的で大胆な筆使いは、この二枚の絵画でも見事に表れています。田能村竹田(1777–1835)の絵画論『山中人饒舌』(1835年)では、蕪村が池大雅(1723–1776)と肩を並べる存在であり、彼のアイコニックなスタイルを「戦筆」と表現し、その評価が述べられています。この作品で見事に表現されています。
佐々木常平は、蕪村の作品を体系的に研究した際に、この二枚の掛け軸を蕪村の芸術的スタイルが完全に彼自身のものになった彼のキャリアの最後の10年ほど(1770年から1783年)に位置付けています。
画像出所:メトロポリタン美術館
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