「福禄寿」は、江戸時代の作家である勝川春章による作品で、1798年に制作されたものです。この作品は掛軸で、紙に墨と色彩を使用しています。
掛軸は壁に掛けられ、日本の伝統的な絵画や書道を楽しむための媒体として使われました。この作品では、福禄寿と呼ばれる三神の一柱が描かれています。
福禄寿は、幸福・富・長寿の神として知られ、三福神の中で最も長寿で賢いとされています。この絵画では、彼が寿老人のような風貌で描かれており、おおらかな表情や長い寿命を象徴するアイコンとして描かれています。
また、この作品には手柄の岡持という書家による書が添えられています。岡持は1734年から1812年にかけて活躍した書家で、その手による文字がこの作品に特別な価値を与えています。
勝川春章の作品は、その時代の美意識や技術、そして当時の宗教的・精神的な価値観を反映しており、福禄寿を描いたこの作品も、幸福や長寿を象徴する象徴的な存在としての役割を果たしています。
新年の縁起物として、福禄寿は切り詰められた体と長い頭を持ち、杖から経典を掲げることで知恵と長寿を象徴しています。七福神は江戸や大阪の商人の間で信仰を集めていた存在でした。この不老長寿の神は、中国の占星術において南極星の化身とも考えられていました。
勝川春章は18世紀後半に活躍した浮世絵師であり、美人や役者を描くことが彼の通常のテーマでした。福禄寿を描いたこの掛け軸は、おそらく彼の晩年に制作されたものであり、奇抜で力強い墨の筆致で描かれています。この作品には個人的な意味があり、友人たちと共に制作された可能性があります。
また、絵画の上部にある銘文は、絵画制作後に書かれたもので、享年78歳で亡くなった京歌の詩人である手柄の岡持(1734年–1812年)によるものです。彼は老いについての詩「年の暮」でよく知られており、額のしわとして見える多くの年月を、波が岸に押し寄せるように間違って捉え、その消逝に対する自らの後悔を深く感じる、という内容です。
画像出所:メトロポリタン美術館
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