この「チュニック」は、16世紀にインカ文化のアーティストによって制作されたものです。制作地はアルゼンチン、ペルー、あるいはボリビアのいずれかとされています。インカ文化における衣服であり、ラクダ科動物の繊維を使用しています。サイズは縦87センチ×横76.5センチです。

このチュニックは、インカ文化の特徴である繊細な織りと独特のデザインが特徴です。その美しさと精巧さは、インカ人の織物技術の高さを物語っています。また、インカ文化の服装の一部として、その身分や地位を示すために用いられた可能性があります。

この作品は「Textiles-Costumes」の分類に属しており、インカ文化における織物技術と装いの一端を伝える貴重な遺物です。その存在は、当時の服装や装飾に関する洞察を提供しています。

この上質なタペストリー織りの衣服は、表裏、内外ともに同じ黒と白のチェッカーボード柄を特徴とし、赤いV字型のヨークと細部まで丁寧に刺繍された仕上げのエッジが施されています。これらの衣服は、インカ帝国において男性がロインクロスの上に着用するものであり、個人のアイデンティティを示す主要な要素の一つでした。このタイプのチュニックは1532年に征服者であるフランシスコ・ピサロの秘書であるフランシスコ・デ・ヘレスによって初めて言及されました。ヘレスはペルーのカハマルカでのアタワルパ皇帝とピサロの部下たちの会合を記述し、最初のインカ軍団がチェッカーボードのユニフォームを着ていたことに言及しています。

布はインカ文化において極めて重要であり、政治的、軍事的、社会的、宗教的なイベントでは、インカの間で布が交換されたり贈られたりし、焼かれたり犠牲にされることなくは完結しませんでした。精巧なタペストリー織りのチュニックは、戦場で優れた働きをした戦士に授与されたり、インカ皇帝が広大な帝国を拡大するためのキャンペーンで外交的な贈り物として与えられたりしたものです。タペストリーのチュニックの所有や使用はインカ国家によって厳密に管理され、そのような贈り物を受けた人々だけがそれを着用することが許されました。また、インカはタペストリーのチュニックの製造にも厳しいコントロールを行っており、現存する全サイズの例では驚くほどの一貫性が見られます。

インカのタペストリーのチュニックは、単一パネルで単一の継ぎ目を持ち、首のスリットは織りが完了した後に取り外される一時的な緯糸で閉じられていました。完成した織物が織り機から切り離されると、すべての縫い目や端は細かい二重の刺繍で完全に覆われました。縫い目は異なる幅の多色のバンドの正確に繰り返された系列で隠されました。また、その刺繍のエッジの直上には、同じような色の糸でジグザグのラインが作られました。このジグザグの線の正確な意味は不明ですが、それほど重要な意味を持っており、インカ帝国に関する最初の図入りの手稿の一つ（グアマン・ポマ・デ・アヤラ、1615年-1615年）においても王室のチュニックの描写に含まれていました。

画像出所：メトロポリタン美術館