「套料玻璃鍾馗圖鼻煙壺」は、中国清代(1644年から1911年)の作品で、具体的には19世紀中期に制作されたとされています。この作品は、玻璃の上に重ねられた装飾が特徴的な鼻煙壺で、赤珊瑚製のストッパーが付いています。
玻璃の上に重ねられた装飾は「套料」(tàoliào)と呼ばれ、この技法は中国で古くから用いられてきました。通常、異なる色や模様のガラスを重ねて成型し、それぞれの層が透けることで独特の美しさを生み出します。この技法は清代に特に発展し、高度な装飾品や芸術品に応用されました。
「鍾馗圖」はこの鼻煙壺の主題であり、鍾馗は中国の伝説的な妖怪退治の英雄で、道教の守護神でもあります。この鼻煙壺には、鍾馗の姿や関連する装飾が玻璃に彫り込まれていると考えられます。清代の芸術では、伝説的なテーマや民間信仰を取り入れた作品が多く制作され、その装飾は時に非常に詳細かつ精緻です。
赤珊瑚のストッパーは、その美しい色と硬度から尊重され、装飾品や実用品として幅広く用いられました。鼻煙壺は清代の社交的な習慣の一部として、香り付けた煙草を吸うために使用された道具であり、玻璃の透明性と重ねられた装飾が、その使用者に贅沢さと品格を与えていたことでしょう。
このように、「套料玻璃鍾馗圖鼻煙壺」は、清代の高度なガラス装飾技法と伝統的な信仰や社会的習慣が結びついた作品として、美術史上で重要な位置を占めています。
画像出所:メトロポリタン美術館
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