「陶製壺群」は、メキシコのテオティワカン（Teotihuacan）文化に関連する先コロンブス期の陶磁器で、彩色に使用されたと考えられています。これらの壺は、おそらく紀元300年から800年の間に製作されました。テオティワカンは、古代メソアメリカで重要な都市であり、美術や工芸の中心地でした。

「陶製壺群」は、彩色に使用された顔料を保管および運搬するためのものと考えられています。これらの陶器壺は、異なる色の顔料を区別し、美術や装飾に使用するために整理するのに便利でした。各壺は彩色された頸部を持ち、内部には彩色用の粉末や固形顔料が収納されていたでしょう。

「陶製壺群」は、テオティワカン文化の美術制作や彩色技術に関する洞察を提供し、彼らが彩色作業に使用していた具体的な道具の一例です。これらの陶器壺は、当時の美術家や装飾家によって重要な役割を果たしていたことを示しています。

この容器はメキシコ中部に位置する大都市テオティワカンで製作されました。この作品は、5つの球状の陶器壺を統合しており、そのうち4つは四角い足場を形成し、5つ目は中央に配置され、やや上に浮いています。これらの壺は、メソアメリカの宗教において非常に重要な象徴である五つの葉を形成し、これをクインカンス（quincunx）と呼びます。各壺の内部には微量の顔料が塗られており、この容器は画家のパレットとして使用されていたことを示しています。これらの顔料は非常に鮮明で鮮やかであり、この容器が一度か二度しか使用されなかったか、あるいはここで主張されているように、パレットを使用した画家が各色の顔料が割り当てられた壺に定期的に配置されるように注意深く配慮していたことを示唆しています。

このオブジェクトの明るいオレンジ色の着色と薄さは、テオティワカンの「Thin Orange」陶器伝統の特徴です。この陶器は、アーリークラシック期の後半（紀元後200年から600年頃）に栄えました。この陶器のタイプは、技術的および視覚的な洗練さがあり、テオティワカン市外の考古学的文脈でも頻繁に見られます。 “Thin Orange” は、テオティワカンの東にあるプエブラ地域で製造されましたが、その配布は都市によって管理されました。この容器では、陶芸家は下部の4つの壺を、それぞれの壺の中央から90度の角度で放射状に伸びる2本の固体の支柱で接続しました。5つ目の壺は、接続用に4つの粘土ペーストがわずかに適用された点に、下の壺に取り付けられています。各壺には、ペイントの先端を細工するためのリップが付いており、画家がペイントの前に筆やスタイラスの先を整えたと思われます。

メキシカ・テノチティトラン（「アステカ」）の「書き手」である「Tlacuilo」は、中央メキシコのテオティワカンの文化を受け継いだ文化の中で最も望まれる特徴の一つとして、顔料の分離を意識的に保つことを挙げています。16世紀のスペインの修道士であるベルナルディーノ・デ・サハグンは、Tlacuiloについて次のように記録しました。

書き手：文章、インクは彼の特別なスキルです。[彼は]職人、芸術家…色を溶かす画家、顔料を挽く画家です。良い書き手は誠実で慎重で遠慮があり、先見の明があり、熟考する人です。色の判断者、色の適用者…芸術作品を創ります。悪い書き手は鈍く、嫌われ、いらいらする存在で、詐欺師で詐欺師です。彼は輝きのないペイントをし、色を壊し、ぼかし、斜めに描き、衝動的に、急いで、熟慮せずに行動します（Sahagún 1974-82: 1: 54、強調は私のものです）。

サハグンによれば、中央メキシコの画家兼書き手は、顔料の境界を慎重に維持することに、美的好みだけでなく、高潔な道徳と一致すると考えていました。それに対して、顔料をぼかす画家は、広範な宇宙的秩序の乱れを通じて、社会に損害を与える可能性を秘めた深刻な個人的失敗を犯したと見なされました。この陶器の容器がクインカンクスの葉の中で顔料を管理することを示していることから、この16世紀の道徳的感情の祖先が、1000年前のテオティワカンにも存在した可能性があることが示唆されます。

クインカンクスはテオティワカン社会で宗教的に強力なシンボルでした。クインカンクスデザインはメソアメリカ全域でさまざまな関連付けが行われましたが、中央メキシコで最も一般的な意味は「時空」でした。メシカ・テノチティトラン（アステカ）は、この概念を伝えるために「カウイトル（cahuitl）」という用語を使用し、これはメソアメリカの中で中心的な奥義的な宗教的信念の一つでした。クインカンクスがカウイトルの指示子であることの重要性は、テオティワカンで明らかであり、ここでは、この計画都市の最も特権的な建設地で、クインカンクスの形状を持つ床のある建物が建てられました。この構造は「祭壇の神殿」として知られ、テオティワカンの都市計画全体を整理する3マイルにわたる死者の通り（アベニュー・オブ・ザ・デッド）の終端/起点として機能します。この通りの空間は、メソアメリカで神聖とされる時間単位を反映した数値で空間を符号化するために、先住民の建築家によって事前に測定されました。さらに、テオティワカンの都市計画全体で、約50か所の場所で、アーキオロジストが260のドットからなるクインカンクスの形の削られたペトログリフを文書化し、これはメソアメリカの儀式用カレンダーの日数と対応しています。建築家は、おそらくこれらのペトログリフのクインカンクスを使用して、都市のマスタープランに合致した天文学的な整列に従って建物の方向を計算しました。祭壇の神殿、死者の通り、そして削られたペトログリフのクインカンクスを組み合わせて、テオティワカンの人々はカウイトルに心を奪われ、それをクインカンクスを通じて表現しました。

以前の研究では、テオティワカンの建築で見られるクインカンクスと、先住民の15世紀の絵入り書物であるCodex Fejérváry-Mayerの冒頭の類似点について言及しています。このイメージは、260個のドットで形成されたクインカンクスを示し、その中央には神であるテスカトリポカ（「スモーキングミラー」）が立っています。この複雑なクインカンクスの4つの主要な葉は、空間の向き、基本的な守護神または自然の力、そして特に今回の議論にとって重要なこと、異なる色で区別されています。この書物は、中央メキシコの人々が仕上がった芸術作品で明確な色の向きを重視していたことを示していますが、この容器内の顔料の残留物は、この制御された色の向きが、絵画プロセスの発想段階から画家兼書き手によって重視されていたことを意味します。筆が紙に触れる前、このオブジェクトを所有していた画家兼書き手は、彼女/彼の顔料を、大都市全体の天文学的および宗教的な指向を反映する事前存在の社会規範に従って割り当てました。

Trenton Barnes
Sylvan C. Coleman and Pam Coleman Memorial Fund Fellow, 2017–2018

出典：Sahagún、Bernardino de。 Florentine Codex: General History of the Things of New Spain、Arthur J. O. AndersonおよびCharles E. Dibbleによって翻訳。 Salt Lake City：University of Utah Press、1978–82。

画像出所：メトロポリタン美術館