【パレパイ (霊船布)　地木船形文様紋織】インドネシア・スマトラ島・クロェ-20世紀-浮紋織(木綿)－常設展－東京国立博物館

人や船を織り表した霊船布は、スマトラ島南部で婚礼や葬送儀礼に用いられました。船には魔除けの力があり、死者の霊を運ぶと伝えられます。「パレパイ」は特に3mほどの長大な作品を指し、最も重んじられました。裂幅いっぱいに通した緯糸を、表面で浮かせることで、文様を表しています。

インドネシアのスマトラ島・クロエ地域において、20世紀に流行したのは、浮紋織(うきもんおり)のパレパイと呼ばれる布地です。パレパイは、霊船布とも呼ばれ、地木船形文様の紋織(もんおり)が特徴的です。

浮紋織は、特定の文様を織り込むために糸を浮かせる技法です。木綿などの自然繊維を使い、糸を紡いで織り上げられます。この技法によって、布地に凸凹した模様が現れ、豊かな立体感と質感を持つ美しいデザインが生み出されます。

パレパイは、主にスマトラ島で伝統的に用いられる特別な布地で、霊船布とも呼ばれます。これは、地元の信仰や文化と深く結びついており、特に葬儀の際に重要な役割を果たします。スマトラ島の一部の民族は、死者を埋葬する際に、パレパイで包んで棺に納める伝統があります。霊船布は、死者の霊を安らかに運び、その魂を守ると考えられています。

地木船形文様は、パレパイに特有のデザインで、船の形をモチーフにした文様が織り込まれています。船はスマトラ島の海洋文化において重要な役割を果たしており、パレパイの文様には船の航海や船乗りの安全を象徴する意味合いが込められています。また、地木船形文様は船乗りの冒険心や勇気を称えるものとしても捉えられています。

パレパイは、スマトラ島の伝統工芸品として大切に守られ、手織りによって製造されています。これらの美しい布地は、地域の文化遺産として認識され、特に葬儀や重要な行事の際に使用されるほか、地域の工芸品として国内外で愛されています。