【三吏三別 唐時代・杜甫】書:邢端-陳雲誥
潼關吏
朝代:唐代作者:杜甫更新時間:2017-03-31
士卒何草草,築城潼關道。大城鐵不如,小城萬丈余。
借問潼關吏,修關還備胡。要我下馬行,為我指山隅。
連雲列戰格,飛鳥不能逾。胡來但自守,豈復憂西都。
丈人視要處,窄狹容單車。艱難奮長戟,萬古用一夫。
哀哉桃林戰,百萬化為魚。請囑防關將,慎勿學哥舒。
「三吏三別」の一篇である「潼關吏」は、唐代の詩人杜甫によって詠まれた詩です。この詩は、潼関(とうかん)という重要な要塞の守備を担当する吏の姿を通じて、忠誠と覚悟、苦難と奮闘を描いています。
詩の中で描かれる潼関吏は、城壁の築造や守備の準備に忙しく働く兵士たちです。大きな城壁は鉄の塊のように堅固であり、小さな城壁も万丈(まんじょう)もあるほどの長さを持っています。
詩人は潼関吏に尋ねます。「潼関の守備は整っていますか?胡(異民族)の侵攻に備えるために私を案内してください。」連なる山々や陣地を指し示され、雲が立ち並ぶ戦場が広がっています。飛ぶ鳥ですら越えることのできないような険しい地形ですが、胡の軍勢が攻めて来ても潼関は自らを守り、西の都を心配する必要はありません。
潼関の要所を見ると、そこは狭く、一台の車が通れるほどの容積しかありません。厳しい状況の中で勇敢に長い槍を振るい、一人の兵士が何万世代にも渡って戦ってきたのです。
詩は、悲しい桃林の戦いを嘆きます。百万の兵士たちが魚のように命を落としたと言います。詩人は、潼関の将軍たちに対して戦いの準備をしっかりとし、哥舒のような敗北を学ばないように慎重であるように求めます。
「潼關吏」は、潼関の重要性と守備の困難さを通じて、忠義と勇気を称える詩です。杜甫の詩の中でも歴史的な出来事を詠んだ作品として知られています。
新安吏
客行新安道,喧呼聞點兵。借問新安吏,縣小更無丁。
府帖昨夜下,次選中男行。中男絕短小,何以守王城。
肥男有母送,瘦男獨伶俜。白水暮東流,青山猶哭聲。
莫自使眼枯,收汝淚縱橫。眼枯即見骨,天地終無情。
我軍取相州,日夕望其平。豈意賊難料,歸軍星散營。
就糧近故壘,練卒依舊京。掘壕不到水,牧馬役亦輕。
況乃王師順,撫養甚分明。送行勿泣血,仆射如父兄。
「新安吏」は、唐代の詩人杜甫の詩作品です。詩は、杜甫が旅行中に新安道を通りかかり、兵士の動員の様子を目にし、そこにいる新安の役人に対して問いかける形で書かれています。
詩の中で、杜甫は新安の役人に向かって質問を投げかけます。なぜ新安という小さな町には兵士がいないのかと疑問を呈し、その中でも特に身体の小さい兵士がどのようにして王城を守るのかと尋ねています。
詩は、戦乱の中での現実の状況や困難さを描写しています。痩せこけた兵士がいる一方で、太った兵士は母親に見送られています。白い川が東へ流れ、青い山がまだ嘆きの声を上げていると詩には表現されています。
杜甫は、自分の涙を流さないようにと新安の役人に助言し、涙を拭いてくださいと伝えます。涙を流すと目が乾き、目が乾くと骨が見えてしまうのだから、天地は決して情けをかけてくれないと述べています。
詩は、杜甫が新安の役人に対して送り出しの言葉を述べる形で終わります。杜甫は自分たちの軍が相州を取り戻すことを日夜望んでおり、敵は予想外に頑強であり、帰軍した兵士たちは星散してしまいました。しかし、古い城壁に近い場所で食料を調達し、兵士たちは以前の都市での任務を続けます。彼らは堀を掘っても水には至らず、馬の世話も軽いものです。
最後に杜甫は、王の軍勢が順調に進んでいることを強調し、彼らを慰め、涙を流さないようにと新安の役人に告げます。そして、新安の役人に対して仆射(父兄)のように見守り、送り出すように述べて詩を結びます。
石壕吏
暮投石壕村,有吏夜捉人。老翁逾墻走,老婦出門看。
吏呼一何怒,婦啼一何苦。聽婦前致詞,三男鄴城戍。
一男附書至,二男新戰死。存者且偷生,死者長已矣。
室中更無人,惟有乳下孫。有孫母未去,出入無完裙。
老嫗力雖衰,請從吏夜歸。急應河陽役,猶得備晨炊。
夜久語聲絕,如聞泣幽咽。天明登前途,獨與老翁別。
「石壕吏」は、唐代の詩人杜甫の詩作品です。詩は、暮れに石壕村に投宿した杜甫が、村の吏によって夜間に人が捕まえられる光景を目撃し、その出来事を描写しています。
詩の中で、杜甫は老いた男性が塀を乗り越えて逃げ、老いた女性が出てきて様子を見ます。村の吏は怒りをあらわに叫び、女性は悲しみの声を上げます。女性の前で話を聞いてみると、三人の息子が鄴城で守備についていることがわかります。
一人の息子が手紙を携えて帰ってきたが、二人目の息子は新たな戦闘で亡くなりました。生き残った者は生き延びようとしているだけであり、亡くなった者は長い間もういないのです。
家には誰もいない。ただ乳飲み子が一人います。母親はまだ去っていませんが、出入りするときには完全な裙(スカート)を身に着けていません。
老いた女性は体力は衰えていますが、吏と一緒に夜に帰るように頼みます。急いで河陽の役に就かなければならず、まだ朝の食事の準備をすることができるでしょう。夜が進むにつれて、会話は途切れ、泣き声が幽かに聞こえます。天が明けて道路に登ると、杜甫は老人と別れることになります。
この詩は、杜甫が農民の困難な現実を描写しており、戦乱の中で家族が分断され、苦労して生活している様子が表現されています。家族の分離と苦悩を通じて、人間の生の脆さと不条理さを描いています。
新婚別
兔絲附蓬麻,引蔓故不長。嫁女與征夫,不如棄路旁。
結發為妻子,席不暖君床。暮婚晨告別,無乃太匆忙。
君行雖不遠,守邊赴河陽。妾身未分明,何以拜姑嫜。
父母養我時,日夜令我藏。生女有所歸,雞狗亦得將。
君今往死地,沈痛迫中腸。誓欲隨君去,形勢反蒼黃。
勿為新婚念,努力事戎行。婦人在軍中,兵氣恐不揚。
自嗟貧家女,久致羅襦裳。羅襦不復施,對君洗紅妝。
仰視百鳥飛,大小必雙翔。人事多錯迕,與君永相望。
「新婚別」は、唐代の詩人杜甫による詩です。この詩は、新婚の夫婦が戦争のために別れる悲しい出来事を描いています。
詩の中で、絹の糸がつるに絡みつき、引っ張ると伸びないように、嫁いだ女性は兵士の夫とともに棄てられた道端に置かれるのと同じほどの価値しか持っていないと述べています。髪を結び、妻となることは、夫の床が暖かくなることではありません。夕方に結婚し、朝に別れることは、あまりにも急ぎすぎることではないでしょうか。
夫の出征は遠くないですが、彼は国境に守りに行き、河陽に向かいます。私はまだ夫の本当の姿を知りませんので、どのように姑に挨拶をすればよいのでしょうか。
父母が私を育ててくれたとき、彼らは私を日夜隠していました。娘は帰る場所がありますが、鶏や犬も連れていけるでしょう。夫よ、今あなたは死地に向かって行きますが、深い痛みが私の心を襲います。誓います、あなたについて行くことを、しかし状況は逆に暗いものとなりました。
新婚の思いを抱かず、努力して戦争に臨みましょう。女性が軍中にいると、兵士たちの士気が上がらないことを恐れています。自分の身を悲しむ貧しい家の女性として、長い間羅の衣を身に着けてきました。しかし、もはやそれを身にまとうことはありません。あなたのために紅い化粧を洗いながら、百鳥が飛び立つ様子を見上げましょう。大小さまざまな鳥が必ず一緒に飛ぶものです。人の事情はしばしば間違いや衝突を起こしますが、私たちは永遠に互いを見つめ合うでしょう。
この詩は、愛と別離、戦争と苦悩、女性の立場など、人間の情感と現
実の葛藤を描いています。夫と妻が戦争のために分かれるというテーマは、杜甫の詩の中でもよく見られるモチーフの一つです。
垂老別
四郊未寧靜,垂老不得安。子孫陣亡盡,焉用身獨完。
投杖出門去,同行為辛酸。幸有牙齒存,所悲骨髓幹。
男兒既介胄,長揖別上官。老妻臥路啼,歲暮衣裳單。
孰知是死別,且復傷其寒。此去必不歸,還聞勸加餐。
土門壁甚堅,杏園度亦難。勢異鄴城下,縱死時猶寬。
人生有離合,豈擇衰老端。憶昔少壯日,遲回竟長嘆。
萬國盡征戍,烽火被岡巒。積屍草木腥,流血川原丹。
何鄉為樂土,安敢尚盤桓。棄絕蓬室居,塌然摧肺肝。
「垂老別」は、唐代の詩人杜甫による詩です。この詩は、老いた人が平和な生活を送ることができず、子孫が皆亡くなってしまったという苦悩を描いています。
詩の中で、周囲の四方がまだ平穏ではなく、老いた人々は安らぎを得ることができません。子孫たちは戦争で全て亡くなり、自身が一人で生き残ったところで何の意味があるでしょうか。
詩人は杖を投げ出して外に出て行きますが、同行すること自体が辛いことです。幸いにも歯は残っていますが、骨と髄に悲しみが詰まっています。男性は身を固め、長揖(おじぎ)して上官と別れます。老妻は道に臥せて泣き、年の暮れには衣服も一枚になってしまいます。
誰が死別の苦しみを知り、寒さをさらに傷つけるでしょうか。このまま去って帰らず、食事を増やすように勧められます。土の門や壁は非常に堅く、杏の園を通り抜けることさえ困難です。情勢は鄴城の下とは異なり、死ぬ時でもまだ余裕があります。
人生には離合があり、老いることは選ぶものではありません。昔の若かりし日を思い出し、遅く戻っても長いため息が出ます。万国が戦場に徴兵され、烽火(のろし)が山々を覆い、積み上げられた死体や草木の臭い、川原に流れる赤い血。
どの国が幸せな土地となるでしょうか、ましてや引き延ばすことなどできません。蓬室を捨て、心臓と肝臓が崩れ落ちるような思いで生活します。
無家別
寂寞天寶後,園廬但蒿藜。我裏百余家,世亂各東西。
存者無消息,死者為塵泥。賤子因陣敗,歸來尋舊蹊。
人行見空巷,日瘦氣慘淒。但對狐與貍,豎毛怒我啼。
四鄰何所有,一二老寡妻。宿鳥戀本枝,安辭且窮棲。
方春獨荷鋤,日暮還灌畦。縣吏知我至,召令習鼓鞞。
雖從本州役,內顧無所攜。近行止一身,遠去終轉迷。
家鄉既蕩盡,遠近理亦齊。永痛長病母,五年委溝溪。
生我不得力,終身兩酸嘶。人生無家別,何以為烝黎。
「無家別」は、唐代の詩人杜甫による詩です。この詩は、天寶年間以降の混乱した時代において、家を失った詩人の寂寥な境遇を描いています。
詩の中で、詩人は荒れ果てた庭園の中でさびしく暮らしています。百余りの家族がいた我が家も今はなく、世の乱れによって各々が東西に散り散りになっています。生き残った者たちは消息を知ることもなく、亡くなった者たちはただちりとなってしまいました。
詩人は貧しい身分であったため、戦闘に敗れて故郷に帰ってきた際にも昔の小道を探しました。人々の通る空しい通りを見ると、日に日に痩せ細り、気憂いな状態です。ただ狐や貉に向かって、毛を逆立てて泣き叫びます。
周囲の近隣には何もありません。たった一、二人の老いた寡婦がいます。宿り木に戻りたがる宿鳥のように、安らかな場所を求めて別れを告げます。詩人は春に一人で鋤(す)を持ち、日が暮れるまで畑を耕し続けます。地方の役人は私が来るのを知って、私を呼んで太鼓を叩かせます。本来、私は本州で仕事をするべきですが、内心では何も持ち合わせておらず、近くでも行く先は迷い続けます。
故郷は既に荒廃し、遠近の理も同様です。母親は長い病気に苦しみ、五年間も溝のほとりで過ごしています。私を生んでくれた母は力を得ることができず、一生涯苦しみに満ちた声で悲しんでいます。人生において家を失い、別れることは、烝黎(黎民)としてどのように生きるべきか分からなくなってしまいます。
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