ピエール＝オーギュスト・コー（Pierre-Auguste Cot）の「嵐」（The Storm）は、1880年に制作された絵画です。この作品は、彼のキャリアの中でも注目すべき作品の一つとされています。

「嵐」は、嵐の中で共にいる若いカップルが描かれています。絵画は劇的な雰囲気と情熱的な瞬間を捉えており、嵐の中でのカップルの姿が力強く描かれています。彼らは風と雨にさらされながらも、お互いにしっかりと抱きしめ合っている様子が描かれています。

この作品は、「春の季節」（Springtime）と同様にロマンティックな美しさを持っており、自然の力強さと愛情の情熱を表現しています。コーはロマン派の要素を取り入れ、感情豊かな作品を制作することで知られており、この絵画もその一例です。

「嵐」はコーの芸術的な成熟期に制作された作品であり、その技術と感性が見事に表現されています。美術愛好家にとっても、コーの作品はその美的価値と感情的な深さから高く評価されており、彼の芸術的遺産の重要な一部です。

コーがこの絵画を1880年のサロンで展示した際、評論家たちはその題材の出所について憶測しました。一部の人々は、フランスの小説家ベルナルディン・ド・サン＝ピエール（Bernardin de Saint-Pierre）の小説『ポールとヴァージニー』を提案しました。この小説では、ティーンエイジャーの主人公たちが雨に遭遇し、ヒロインのオーバースカートを即席の傘として使って避難する場面が描かれています。他の人々は、古代ギリシャの作家ロングス（Longus）による恋愛小説『ダフニスとクロエ』を提案しました。

ニューヨークのコレクターでメトロポリタン美術館の恩恵を受ける者であるキャサリン・ロリラード・ウルフは、コーの主要なパトロンである従兄弟のジョン・ウルフの指導のもとで、この作品を委託しました。この絵画は、コーの以前の作品「春の季節」（2012.575）と同様に非常に人気があり、多くの複製が作成されました。

画像出所：メトロポリタン美術館