【瀟湘八景図 Eight Views of Xiao and Xiang】日本‐江戸時代‐岩佐又兵衛
「瀟湘八景図」は、日本の江戸時代(1615年–1868年)の作品で、作者は岩佐又兵衛(Iwasa Matabei)とされています。この作品は、掛け軸の形式で表現された二連作品(ディプティク)で、絵画の媒体は紙に墨と彩色が使用されています。
作品のテーマは「瀟湘八景」であり、これは中国の詩人謝霊運の詩に基づくものです。この詩には、湖南省の瀟湘江の美しい風景が描かれています。岩佐又兵衛は、これらの風景を独自の視点で描き、日本の環境や文脈に合わせて再解釈しました。
各掛け軸の寸法は、画像部分がそれぞれ高さ36 3/8インチ × 幅11 3/8インチ(約92.4 × 28.9センチメートル)、全体の取り付けを含むと高さ69 1/2インチ × 幅16 1/4インチ(約176.5 × 41.3センチメートル)です。
岩佐又兵衛は、日本の初期の浮世絵師であり、彼の作品はその時代の文化や美学を反映しています。この作品は、風景の美しさと日本の伝統的な絵画技法を通じて、当時の芸術の一例を提供しています。
画像出所:メトロポリタン美術館
この掛け軸は、墨で描かれた大気に満ちた風景で、書道の銘文はないものの、詩的な含意に富んでいます。左右の巻物は独立したまとまった構図のように見えますが、実際には「瀟湘八景」というテーマに視覚的な言及を取り入れ、協力しています。このテーマは、詩人宋迪(約1015年–約1080年)の詩に触発され、現在の湖南省にある瀟湘江の合流地域に関するものです。この再現では、伝統的なモチーフがディプティクス形式に革新的に圧縮されています。
「瀟湘八景」の絵画テーマは、中国で11世紀末に流行し、中国から輸入された絵画を通じて中世の日本に伝わりました。右の巻物では、以下の四つの景色が識別できます(構図の上から下へ): “Autumn Moon over Lake Dongting”(洞庭秋月); “Evening Bell from a Mist-Shrouded Temple”(煙寺晩鐘); “Mountain Market in Clearing Mist”(山市晴嵐); そして “Fishing Village in Evening Glow”(漁村夕照)—最後の景色は、魚網と一人の漁師によって示唆されています。左の巻物では、残りの四つの景色が上から下へと再現されています: “River and Sky in Evening Snow”(江天暮雪)—急勾配の山に積もる雪で描かれています; “Wild Geese Descending to a Sandbar”(平沙落雁)—ガンの群れが巻物の右端に見えます; “Sails Returning from a Distant Shore”(遠浦帰帆); そして “Night Rain on the Xiao and Xiang Rivers”(瀟湘夜雨)—傘をさした男性と上空の暗い霧に微妙にほのめかされています。
このディプティクス以外にも、岩佐又兵衛の風景画はほとんど残っていません。四季の田舎の生活を描いた屏風、瀟湘八景をテーマにした手巻き巻物(いずれも出光美術館蔵)などが知られています。詩人で中国からの移住者である陳元贇(Chin Genpin、1587年–1674年)による詩の銘文が付いた詳細な「瀟湘八景」の手巻き巻物には、画家の署名や印章はありませんが、手巻き巻物とディプティクスの松の木や他の風景要素の特異な取り扱い(松の細長い針と葉の点描的描写)から、岩佐又兵衛の制作であることが示唆されています。福井美術館に所蔵されている中国の紳士が若い男性の使用人に耳かきをしてもらっている小さな円形の絵も、ここで見られるものと同じスタイルで、同じ「Dōun」という四角い浮彫の印章が使われています。
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