この「ダブル鉢」は、古代ペルーのインカ文化に属する陶器です。14世紀から16世紀にかけて作られたもので、陶器製の容器であり、表面には滑らかな塗料(スリップ)が用いられています。サイズは高さ約9.2センチ、幅約13.3センチ、奥行き約18.1センチです。
特徴的なこの作品は、二つのボウルが一つの構造になっている点です。それぞれのボウルは別々の料理を盛り付けるために使われ、このデザインは食事の際に便利であったと考えられています。インカ文化の特徴である技術の高さや芸術性がこの陶器にも見られ、陶芸の精巧さと彩色の美しさが特筆されます。
この作品は「Ceramics-Containers」の分類に属しており、インカ文化の日常生活や食文化を垣間見ることができる貴重な遺物です。その存在は、当時の食事や暮らし方について洞察を得るための重要な資料となっています。
インカ時代において、陶器の製造と流通は国家によって管理されていました。インカ帝国の首都であるクスコおよびその周辺で製造され、使用された陶器は「クスコ・インカ様式」として知られています。これらの陶器は優れた職人技術を特徴とし、独特で魅力的かつ創造的な形状を持つものがあります。この作品もそのカテゴリーに属しています。
浅くわずかに内側に湾曲した鉢が三つの短い支持体の上に置かれ、内部には小さな鉢があります。二つの長い首を持つ動物、ラマと鳥がそれぞれ一方の側面に取り付けられ、内側の鉢と外側の鉢に接続され、注ぎ口として機能します。また、おそらくはヒョウなどの、細身で斑点のある動物の体が大きな鉢の上部にかかっており、その肉球が縁を掴んでいます。この器は、茶色の土台に黒と赤のスリップで塗装されており、外壁には昆虫が描かれた区分されたバンドがあります。
おそらくこの器は「パッチャ」として知られる、チチャ(トウモロコシビール)などを大地に注ぐための儀式用容器として使用されていたと考えられます。描かれている動物たちは、インカ帝国の多様な環境地域を象徴しています。長い首を持つ海鳥は西の海を、ラマは中央の高いアンデス山脈を、そしてヒョウは東の熱帯雨林を示している可能性があります。
画像出所:メトロポリタン美術館
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