【蟾宮折桂紋絲繡鏡套 Mirror case with lunar scene】中国‐清代
「蟾宮折桂紋絲繡鏡套」は、中国の清代(1644年から1911年)にあたる19世紀に制作された作品です。直径が約43.2センチの刺繍された絹ガーゼでできた鏡のカバーです。
この鏡のカバーは、繊細で精巧な刺繍で装飾されており、蟾宮や桂の模様が見事に表現されています。蟾宮は、中国の伝説や民話に登場する仙蟾(せんかん)と呼ばれる幸運や富をもたらすとされるカエルの住処とされ、吉祥の象徴とされています。桂は中国の伝統的なシンボルであり、長寿や高潔、高貴さを象徴しています。
この鏡のカバーは、中国の美術工芸の伝統を反映し、豊かな色彩と緻密な刺繍技術によって、美しく華やかなデザインが表現されています。清代の芸術作品として、吉祥の象徴となる図柄が描かれたこの鏡のカバーは、豊かな文化的背景と美的感覚を伝える重要な作品の一つです。
中国の帝国時代では、身分の低い学者でも、国家が3年ごとに実施する科挙(公務員試験)に合格し、官僚としてのキャリアを築くことで社会的地位を向上させることができました。この偉業は、一般的な文化では「月の桂を摘む」として象徴されることがありました。この刺繍された絹のケースは、成功した学者に月の桂の枝を手渡す、嫦娥(チャンエ)という女神を描いています。彼女は付き人とウサギと共に描かれ、月の桂の枝を手渡しています。
画像出所:メトロポリタン美術館
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