「蝶形陶印章」は、14世紀から16世紀初頭にかけてメキシコのメソアメリカ地域で作られた、アステカ文化の陶器です。この陶器は、蝶のモチーフを特徴としています。アステカ文化では、蝶は精神的な象徴や宗教的な意味を持っており、再生や変容、そして死後の世界への移行などの象徴とされていました。

この「蝶形陶印章」は、陶器を使ったアステカ文化の芸術作品の一部であり、その精巧なデザインや独特な文化的意味合いから注目されています。形や装飾に込められた意味は、アステカ文化の信仰や精神世界を垣間見ることができる貴重な遺物とされています。

画像出所：メトロポリタン美術館

この陶器の印章には、背面から描かれた蝶の姿が特徴で、広げられた翅、前脚、および吻を持っています。二重の円形の枠で囲まれた蝶は、腹部または背中に別の円を持っています。後者のモチーフは、ナワトル語で緑の色、豊穣、貴重さを表す丸い翡翠のビーズ（chalchihuitl）を意味している可能性が高いです。

蝶のイメージは、メソアメリカの芸術において長い歴史を持ち、時間の経過とともに複数の意味や関連を持っていた可能性があります。テオティワカンやチョルーラの古典期初期の壁画では、戦士、火、豊穣、死と再生と関連付けられています。また、後古典期（紀元前1300年〜1521年頃）のミシュテカ人やアステカ人の間では、鼻飾りやカラフルな宴会用の器、男性と女性の神々の彫刻に蝶が飾られていました。ショチキェツァル（「花のケツァル」）やソチピリ（「花の王子」）の仲間として、楽しみと豊かさのテーマを象徴しました。一方、イツパパロトル（「黒曜石の蝶」）と共にいると、貪欲さや二重性を表しました。それでも、ほとんどの学者は、メソアメリカの人々が蝶を魂に近いものと見なしていたと考えています。これは古代ギリシャ人やヒンドゥー教徒とも共有されていた信念です。しばしば陶器の香炉に飾られており、通常は葬儀の文脈で見られる蝶の関連性は、火、再生、呼吸と結びついています。さらに、蝶やハチドリなどの翼を持つ存在は、輪廻の概念と密接に関連していました。

隠喩的なレベルで、死者と共に刻印を含めることは、アステカの詩で表現される儚さの考え方を指しているかもしれません。なぜなら、装飾品としての刻印は、全てが透明なもの（例えば布地）、壊れやすいもの（例えば陶器）、または他の傷みやすいものを飾るために使われているからです。したがって、アステカが自分たちの肌を同じ刻印で装飾することで、人間の姿を概念的に布地や粘土の脆弱性と同一視したのかもしれません。それでも、これらのオブジェクトは基本的に非常に個人的な所有物であり、生者と死者の両方と密接に関連していました。

ウィリアム・T・ガサウェイ、2014-15年のシルヴァン・C・コールマンおよびパメラ・コールマンフェロー