「回文歌 京 大阪 江戸」（かいぶんか きょう おおさか えど）は、江戸時代の日本の浮世絵師である鈴木春信（Suzuki Harunobu）による作品の一つです。鈴木春信は、浮世絵の初期の巨匠の一人で、特に彼の美しい色刷り版画が知られています。

この作品は、回文歌（かいぶんか）と呼ばれる詩の形式を表現したものです。回文歌は、文字通り前後対称の詩で、詩の前半と後半が鏡像的であり、逆さまに読んでも同じ意味になるものが特徴です。

「京 大阪 江戸」というタイトルは、当時の日本の主要な都市である京都、大阪、江戸を指しており、各地の情景や文化を詠んだ回文歌の一部を表現している可能性が高いです。鈴木春信の作品は、当時の日本の風俗や美意識を捉えたものとして高く評価され、その版画は浮世絵の黄金時代を代表するものとされています。

回文歌は、日本の詩の伝統において興味深い詩形の一つであり、文字や言葉の遊びを楽しむものとして知られています。この作品は、鈴木春信の芸術的なセンスと、詩と絵画が組み合わさった作品の一例と言えるでしょう。

この三枚の絵で構成される三枚物（トリプティク）は、日本の歌舞伎役者たちを描いた作品で、それぞれの役者が日本の主要な都市を代表し、それぞれの都市が商業文化の中心地であったことを反映しています。この作品は、言葉とイメージが絶妙に組み合わさり、遊び心に富んだ作品です。

この三枚物の右側のセクションには、役者の中村富十郎が箏（こと）の前に立っています。窓の外では桜の花が咲いています。上部に記された回文（palindrome）の詩は以下の通りです：

「岸陽こそ
松か見きはに
琴の音の
床には君か
妻ぞ恋しき」

この詩は、前進と逆戻りの両方で同じように読める回文詩です。詩は、昔のように、待つこと、岸辺にある松、箏の音のように、あなたは私にとって妻ほど愛おしいと表現しています。

この作品では、役者と詩が組み合わさっており、詩のイメージと関連付けられた日常の物品が描かれています。それによって、詩の理想的なイメージがより具体的に表現されています。詩の内容と絵画が相互に関連づけられ、観客に美的な鑑賞と詩の楽しさを提供しています。この作品は、日本の浮世絵の美しさと独創性を示すものと言えるでしょう。

画像出所：メトロポリタン美術館