これは、刀装具職人である嵐山常行(Ranzan Tsuneyuki)の個人のスケッチブックです。このスケッチブックには、モノクロとカラーのペンとインクのスケッチ、既存の作品の図面が含まれており、これらはアーティストのモデルとインスピレーションの両方として彼に役立ちました。このようなスケッチブックは個人的な使用のために保管され、一般の人々に公開されることは意図されていませんでしたが、学習目的で生徒に提供されることがありました。このスケッチブックには、当時22歳の弟子である愛山義行(Aizan Yoshiyuki)への明示的な要求が含まれており、嵐山常行は彼を自身の後継者と見なしていたことを示しています。
江戸時代、”彫鐫画譜”(ほうせんがふ)は、彫刻や鐫刻(ちょうこく、版画技法の一つ)の技術を学ぶための指南書や教材として使用された書物を指します。これらの書物は、版画家、刀装具職人、彫金師、彫刻家、版画師、木工職人など、さまざまな工芸分野の職人やアーティストに役立つ情報を提供しました。
彫鐫画譜は、以下の要素を含むことが一般的でした:
- 技術解説: 書物には彫刻や鐫刻の技術に関する詳細な解説や手順が含まれており、特定の技術やスキルを習得するための指導が提供されました。
- 模範図: 書物には模範となる図版やイラストが含まれ、読者が実際の作品や彫刻を模倣するのに役立ちました。これらの図版は、彫刻のデザインや構造を理解するのに役立ちました。
- 素材と道具: 素材の選択、道具の使用方法、材料の調達方法など、具体的な情報も提供されました。
- 歴史と背景: 一部の書物には、彫刻や鐫刻技術の歴史や文化的な背景についての情報も含まれていました。
これらの書物は、技術の継承や改良、芸術的な創造性の向上に役立ち、江戸時代の工芸や芸術の発展に寄与しました。また、後の時代においても彫刻や版画などの伝統的な技術を学びたい人々にとって、貴重なリソースとなりました。
画像出所:メトロポリタン美術館
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