【仏伝「初転法輪」】パキスタン・ガンダーラ|クシャーン朝・2〜3世紀|片岩－常設展－東京国立博物館

パキスタンのガンダーラ（Gandhara）は、古代において仏教芸術が栄えた重要な地域です。ガンダーラは現在のパキスタンの北西部に位置し、クシャーン朝（Kushan Empire）の時代、紀元2世紀から3世紀にかけて特に繁栄しました。

「仏伝「初転法輪」」とは、仏教における重要な出来事の一つであり、仏陀（釈迦牟尼仏）が初めて法輪（教え）を回したとされる出来事を指します。これはサールナート（Sarnath）で行われたとされています。この出来事は、後に仏教の成立と広がりに大きな影響を与えることとなりました。

ガンダーラ地域は、クシャーン朝の支配下にあり、インドとギリシャ文化の交流が盛んでした。この文化的交流により、「ガンダーラ美術」として知られる芸術様式が発展しました。ガンダーラ美術は、ギリシャの彫刻技法とインドの仏教主題を組み合わせた特有のスタイルであり、仏陀や仏教の他の重要な人物の彫像が制作されました。

「仏伝「初転法輪」」の彫刻もガンダーラ美術の一環として制作されました。これらの彫刻は、石材料である片岩（しょうがん）に彫られていたとされています。片岩は比較的柔らかく彫刻しやすい石材であり、仏陀の頭部や輪郭などの繊細な表現が可能でした。

「仏伝「初転法輪」」の片岩彫刻は、仏陀が法輪を回した瞬間を表現していると考えられています。これらの彫刻は、ガンダーラ美術の特徴であるリアルな表情や豊かな衣装、仏陀の優美なポーズなどが見られ、その芸術的な技巧と感動的な表現が高く評価されています。

これらのガンダーラ美術の作品は、パキスタンのガンダーラ地域で発見され、世界中の美術館や博物館で展示されています。これらの彫刻は仏教芸術の歴史を理解する上で重要な資料となっており、当時の文化や芸術の発展を伝える貴重な遺産とされています。