【こぶ牛文装飾皿】イラン出土|後期ヘレニズム〜パルティア時代・前3世紀後半〜前1世紀前半|銀製、部分鍍金－常設展－東京国立博物館

鍍金を施したこぶ牛、周辺の文様帯も、洗練されたヘレニズム風ですが、外面周縁の「中世」ペルシア語銘文から、この皿がアルダクシャハル王に彼の兄弟から贈られたこと、50スタテールの重量であることなどがわかります。当時のファールス地方の言語による重要史料です。

「こぶ牛文装飾皿」とは、銀製の皿で、その表面に部分的に鍍金（金メッキ）が施されていることが特徴的です。この装飾皿はイラン地域で後期ヘレニズムからパルティア時代にかけての時期に制作されたものであり、その芸術的な様式や文化的な背景を示す重要な考古学的な遺物となっています。

「こぶ牛文」という名称は、この装飾皿のデザインに用いられている独特の模様に由来します。一般的に、装飾皿の中央部にこぶ牛が描かれており、その周囲に幾何学的な文様や植物のモチーフが配置されています。こぶ牛は古代イランやメソポタミア地域において重要な象徴的な意味を持っていたと考えられていますが、具体的な意味や象徴についてはさまざまな解釈があります。

これらの装飾皿は、主に贈り物や宗教的な儀式、あるいは贅沢品として使用されていたと考えられています。高い技術と芸術的な精緻さを持つ銀製の装飾皿は、当時の社会の富裕層やエリートの間で高く評価されていたことが窺えます。

イラン出土の後期ヘレニズム〜パルティア時代の装飾皿は、美術史の研究や文化史の理解において重要な資料となっています。これらの遺物は、当時のイラン地域の芸術や文化、社会的な慣習に関する貴重な情報を提供しています。また、銀製品の鍍金技術についても洞察を与えてくれます。